台風24号の被害@シキホール島

2012年12月21日作成
2013年 1月5日更新


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昨年は台風21号による洪水の被害の状況を紹介したが、
今回は本年の台風24号による被害の状況を紹介する。日本の感覚では、12月になぜ台風という感じであるが、フィリピンの特に南部では、11月から12月に台風が西進して、大きな被害をもたらすことが少なくない。

昨年の21号は、雨台風と言え、直撃を受けたミンダナオだけでなく、洪水の被害を受けやすいドゥマゲッティでも多くの死者を出した。今回の24号は、勢力が大きく 強い風が吹いてミンダナオに甚大な被害をもたらしたが、地元のシキホール島でも、死亡者が出るなど、被害は少なくなかった。 大きな被害を出したミンダナオの方は新聞などでも、いろいろと情報が公開されているので、そちらを見てもらうことにして、ここでは、地元のシキホール島の被害状況をまとめておく。

幸運にも と言えるのだろうが、台風が襲った12月4日には私は日本に帰っていたので、自分の身に被害が及ぶことはなかったが、現地の自宅は、茅葺屋根の一部が飛んだり、それなりに被害を蒙った。

新聞でも未確認と書いて部分もあり、人に聞いてもまちまちで、正確なことが書けないが、少なくとも二隻の船が沈んだ。その一つがDelta1というシキホールとドゥマゲッティの間を客を乗せて往復していた船で、最も利用者が多い船が沈没してしまった。新聞には、キャプテンと乗組員の一人が死亡と書かれていたが、未確認とも書かれていて、人の話も総合すると、どうやら幸いに死者は出なかったようだ。
沈んだもう一つの船の乗組員の一人が、先日からパソコンの修理に行っている近所のハイスクールの担当の先生の親戚で、その親戚はロープが絡んで海に沈んで亡くなったそうで、こちらは間違い無さそうだ。

その他にも、大きな木が倒れて、下敷きになって死亡した人が出たという噂があり、少なくとも一人は亡くなったようだ。さらに、飛んで来たトタン板で首を切って死んだ人が出たという噂もあるがよく分からない。訪問者があって、代わりに人に頼んでいたが、役所の担当部署から被害状況をまとめたPress releaseのようなものをもらってきてくれるはずだったが、これもフィリピン流で なかなか手元に届かない。自分で役所に行って、正確な情報が得られれば 更新したい。

被害の様子

シキホール港の待合室

Delta乗り場@ドゥマゲッティ

屋根がほとんど飛んで、家の3/4くらいが屋内洗濯物
干し場になっている近所のチンチンの家

全壊した近所の二階建て

吹き飛んだ家@Luzong

屋根が飛んだ家@Luzong

倒れた巨木@San Juan

被害の大きいところばかり紹介しているが、全体的には、壊れていないi家の方が圧倒的に多い。

バナナで分かる風の強さ

残ったバナナ

倒れたバナナ

かなり沢山あったが、ほとんど倒れた

説明の必要も無さそうで、バナナの状況を見れば、台風の風の強さが判断できる。倒れている向きから風の方向が分かり、倒れている割合や太さ等から風の強さが推定できる。バナナは草のようなもので、暴風の風速25mまで吹かなくても結構倒れる。しかし暴風でも倒れないバナナもある。

バナナの生活の知恵というようなものを紹介しておくと、バナナの葉っぱは大きくて、そのまんまでは、風をまともに受けて、倒れやすい。そこで強風が吹くと、葉っぱは繊維の方向にバラバラに切れる。これで風の抵抗を抑え、何とか倒れずに残ろうとしている。左の写真のバナナは、台風が来てから2週間ほど経過しているもので、一番上の葉っぱだけは、黄緑で色も薄く、切れていない。これは、台風の後で新たに生えてきたものである。ずっと観察していたわけではないが、そう言って間違いないはずだ。

停電

台風が去って1週間余り経過して現地に戻り、たまたま、その約1時間後に、自宅のある地域では電気が復旧し、厳しい生活を強いられることが無くて済んだ。しかし 地域によっては、停電が長引いているところもある。例えば、山の上のかなり広い地域で停電が続いていて、復旧に1ヶ月程度かかるところもある。電力会社の作業員が少ないためであり、他の地域から助っ人が来てくれないものかと思う。

2005年に米国で大きなハリケーンがいくつも来たが、その直後にフロリダに行った時には、全米から電柱や電線のメンテに電気工事士が大量に駆けつけ、復旧にあたっていると新聞に書いてあった。ボランティアではなくて、高収入が得られたはずだ。

シキホールで作業にあたっている人は、精々10人程度で、1ヶ月の人件費は10万ペソ程度のものであろう。同程度の費用を出して、ドゥマゲッティなどから応援に来てもらい、復旧する期間が半分になれば素晴らしいと思うが、そんな気の利いたことをやらないのがフィリピン流とも言えそうだ。私のように主張を書いている人が出るだけでも、何か変わるかもしれないが、そう言ってぼやいているだけでは弱いので、電力会社に行って相談してみたい。台風24号の被害に対する日本政府からの無償の資金援助の数千分の一でも、そちらに回れば、多くの人が停電から開放されそうだが、実際にお金がそちらに回っても、そんなに簡単にはいきそうにないのが、またフィリピン流と言えそうだ。

(2013年1月5日更新分)

電力会社に行って聞いたところでは、電線、電柱のメンテを担当している作業員は、熟練者が7名で、まだ経験の浅い人が27名いるそうだ。他の地域からの助っ人の話を、責任者に聞いてみたが、そんな気の利いた仕組みはないということだった。

電力会社が送電系のメンテに使っている車7台のうち2台は故障しているという話もあり、人の調達や車の修理で何か支援すれば、役に立つボランティア活動と言えそうだが、幸い、現状では、停電は収束に向っている。

近所でも、4週間近く停電していた地区もあったが、現状では山の上の一部の地域を除いて、ほぼ復旧したと言えそうだ。

支援について

日本から支援物資を送りたいという話も出ていているので、それはそれで検討しているところである。
一番困っているのは、家の被害を受けたが予算がないので修理できない場合であろう。20年ほど前に来た台風がシキホール島では、被害が一番ひどくて、多くの家が壊れてしまったそうだ。その時は、政府から直接家の修理費が出たそうで、ほどなく修理が済んだそうだ。
今回も海外から多額の資金援助は来ているが、対象はほとんどがミンダナオのはずで、シキホールで家が壊れた人のところまで資金援助されそうにはない。

近所で屋根が飛んでしまった家の修理などを手伝えないか検討中である。日本など他の国ではボランティアが駆けつけて、チームを組んで対応するところであろうが、フィリピンでは、人を何名か雇って、監督しながら自分も手伝って進めるということになろう。

(2013年1月5日更新分)

地方政府や赤十字などからの支援は、クリスマスの前にそれなりにあった。シキホール島は、州に相当する独立したProvinceの一つである。その中に、市、町に相当するMunicipalが6つある。それぞれのMunicipalごとに、行政からの支援がかなり異なり、 Siquijor, Siquijorの場合、全壊の家は、家の修理の材料費として3000ペソ。お米5kgに缶詰、さらに赤十字からも5kgの米が支給された。一部損壊では、現金支給が減って1500ペソであった。Siquijor, Siquijorは恵まれていて、San Juanでは、被害があった家に、2kgづつ米が支給されただけであった。Larenaでも、乾麺などの食料が少し支給されただけであった。

被害があったところを順に回っていると、結局、平均レベル以上の家は壊れなくて、ど貧民のあばら家で、周囲に何も無くて直接風を受け易い家が被害にあったと言え、貧富の差が被害にそのまま出てしまった形となった。それでも、蓄えのある家は、さっさと修理が済んでいる。あばら家が再建できず、途方にくれている人たちが一番気の毒で、なんとか支援したいものである。

日本から支援物資を送ってもらうよう、複数の人々にお願いしているところで、年始に来られた訪問者には、日本から直接、古着やタオルを持ってきてもらった。年末から被災者を一軒、一軒回って、古着、石鹸、充電式の懐中電灯などを配り始めたところである。

手持ちのチェーンソーを貸し出し、台風で倒れた自分の木や、安く売ってもらった木を自分で切ってもらって、修理に役立てたり、他にもいろいろと家の再建を支援することを検討中である。

これらについては、別途詳しく紹介する予定である。

Business as usual

地震の耐震設計と震度と被害の関係のようなもので、今回被害があったのは、吹けば飛ぶようなあばら家がほどんとである。街中を歩いていても、台風の爪痕を見つけるのは難しい。以前と同様にビジネスが行われている。

いつもと変わらないシキホールの町の様子(1012年12月末)

昨年の台風21号との経路の比較

別途紹介しているように、フィリピンでは台風が西進すると被害を受けることが多いが、昨年の21号も今回の24号も典型的な そのパターンである。

参考までに、デジタル台風を利用させてもらい、二つの台風の経路を比較してみた。寿命の長い方が24号で、今回の24号の方は、かなり長い間時間をかけて成長し、フィリピン南部を直撃したが、フィリピンの近くでは、21号と24号の経路はほとんど重なっている。

今回の24号では、ミンダナオに上陸した頃にも、最強の930hPの勢力であり、ミンダナオを横断し大きな被害をもたらした。イリガンあたりから、シキホールの南、アポ島、ドゥマゲッティの南を通過する時には、975hPにまで勢力が衰えていて、ミンダナオが盾になってくれたお陰で、シキホールの被害は少なくて済んだと言える。それでも、シキホール島の南側のかなり近いところを通過したので結構な被害が出て、直撃したのも間違いない。

デジタル台風による台風21号(2011年)と台風24号(2012年、長寿の方)の経路の比較


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