世界遺産登録後の福建客家土楼

2010年4月



初渓の土楼群

初渓

前回 福建の客家土楼に来たのは、世界遺産の登録の直前。当選確実と言われていたので、観光客が増えて、状況が一変する前に見ておきたかった。そして 今回は世界遺産登録後。前後を比較したかった。
そうは行っても、同じ場所だけでは物足りないので、まずは、前回行けなかった初渓を訪ねた。写真のように、説明の必要もない素晴らしい眺めだ。私の場合は例によって、フィリピンと日本との移動の間に寄り道しただけだが、日本からわざわざ この眺めを目指して ここに来ても十分値打ちがある。ただし、結構歩かないといけないので、足に自信のある人の方が良い。

土楼の向かいの高台で見かけた中国人団体。他にはほとんど客は見かけず、他の土楼と比べ空いている。

周辺の田畑も感じが良い。

土楼内部の様子

階段が並ぶ珍しいパターン

普通の民家の周りも自由に散策できる

前回は、土楼暮らしの厳しさを体験したが、今回行った初渓には、十分綺麗で快適そうな宿もできている。土楼の壁に 余慶楼客桟 という看板が揚がっていて、URLが書かれていたので、後からインターネットで見たら、私には十分過ぎる宿で、前回泊まった土楼宿が便所無しで 壷だけが置かれていたとは大違いである。機会があれば、ここに泊まってみたいものだ。

下洋

初渓に行くには、近くの下洋という町に泊まるのが便利だ。アモイからバスの便が多い永定の町。そこから下洋まで、頻繁にバスが出ている。下洋から、民族村など他の土楼へ行くバスもある。前回、「土楼巡りのバスは走らず」と書いたが、確かに、有名土楼を順に巡るバスというのは ツアーバスだけで、そんな便利な路線バスはない。そのため、インターネットで検索すると、土楼巡りにバイクタクシーという旅行記がやたらと目に付く。しかしながら、実際には、主に現地に住む人のために 路線バスが 各地を結んでいる。うまく乗り換えて使えば、お得に土楼巡りができる。前回の題名は、調査が進んで修正しても良いようになったとも言えそうだ。

下洋バスターミナル
今回泊まった宿。バスターミナルの横に並ぶ賓館の一つ。どこも50〜80元程度で、新しくて綺麗だ。

下洋の大通り

通りの裏側。昔の姿が残っている。

初渓土楼に泊まるか下洋に泊まるか?

初渓に行くのに、土楼に泊まるか下洋に泊まるか悩ましいかもしれない。ここでも どちらもお勧めしているが、何を重視するかで変わってくる。参考のため、表で比較しておく。

場所

初渓土楼

下洋

宿
○ 土楼とは思えぬ快適な宿ができている。
△ ただし値段は確認要。
○ 新しくて綺麗で しかも安い。

食事
△ 観光地なので高め。味は問題なし。 ○ 普通の町なので安い。

アクセス
△ 初渓だけに行くなら便利。ただし、他にも行くなら不便。荷物が多いと 土楼の中までたどり着くのが大変そう。 ○近くの中川にも行くなら、こちらが便利。

環境
○ 土楼暮らし、田舎暮らしを満喫できる。 × ただの町で 埃っぽく、部屋の中以外は快適とは言いがたい。

インターネット

しかしながら、初渓は、他の有名土楼から離れているので、実際には訪れる人も少なく、行かないから、どちらにも泊まらない。もしくは、アモイなど他の場所の高級ホテルに泊まるという人がほとんどかもしれない。

それでも、ここであえて取り上げているのは、ニッチでお奨め、そして、マイルの有効利用という観点からだ。
自然豊かな初渓土楼群に安くて快適に泊まれるのなら、とてもお奨めである。
下洋の宿もお奨めだ。今回は同行者がいたが、こんなコストパフォーマンスの良い宿は、中国では これまで初めてだということである。泊まった80元の部屋は、数百元の宿と比べても遜色ない。違いは、エレベーターがないくらいのことだが、3階までなら、歩いて上がっても大丈夫だろう。コストパフォーマンスの良さの最大の理由は、世界遺産を当てこんで建てたが、客が来なくて、当てが外れたということだろう。そんな宿が並んでいる。宿の造り過ぎというのは、泊まる側にはうれしい状況で、買い手市場である。以前から何度も紹介していて安モーテルが林立するオーランドのキシミー地区。同じくフロリダで、イベントがないと閑散としているデイトナ・ビーチなど、同様の例は多い。


入村料百元に思わず退散 塔下村

世界遺産前後、その一番の変化は、塔下村への入村料 百元であろう。以前は無料だったが、今回は、幹線道路から村へ入るところに、料金所ができて、そこを通過するのに一人百元要求された。もう一人同行者がいたので、二人で二百元。払えなくはないが、この村へ行く目的は前回訪問した三十元の宿に泊まることである。宿のコストパフォーマンスは最高と言えるが、そのためのサーチャージが二百元はバランスが悪過ぎて、ボッタクリとしか思えない。実際には、塔下村は脇役で、この料金のメインは、田螺坑土楼(四菜一湯)であろう。さらに、その他の土楼も含まれる。塔下村へ泊まりに行くだけだと説明しても、許してもらえず、割引もしてくれないので諦めた。

以下、既に紹介済みのものもあるが、前回の写真を載せておく。

近くの小高い丘から見た塔下村の全景

ひなびた温泉の風情

前回訪問した万興楼

万興楼のオーナーの張さん
お茶を沢山ご馳走してもらった。

最上階の部屋

部屋からの眺め

前回泊まった別の宿を差し置いて万興楼だけ取り上げるのは、それなりのホスピタリティーを感じたからである。

文化村周辺

永定客家土楼民族文化村は、前回も沢山の観光客で賑わっていたが、今回は、駐車場が拡張されたりして、さらに多くの人が訪れていた。ここは、綺麗に整備されていて、テーマパークのようでもあるが、雰囲気は悪くない。

土楼のプリンス 振成楼

この風格は前回と変わらない。

如升楼 
自分でも建ててみたくなるようなコンパクトな土楼。前回はお茶をご馳走してもらったが、今回はなし。観光客が増えたのが理由か。

文化村の前は、かなり変化があった。以前は、ゲートの前の道に5、6軒の宿が並んでいたが、それが、さらに増えて、倍以上になった。裏通りにも宿ができかけていた。しかしながら泊まっている人は少なく、我々以外には見かけなかった。その我々も、塔下村で泊まれなかったため、こちらに来ただけである。場所は便利だが、泊まるだけという感じで、食事も安くない。さらに進むと川の反対側に、大きなホテルができていた。しかし、こちらも ほとんど客はいないようだった。

文化村のゲートの前の安宿長屋

下洋の安宿の方が、コストパフォーマンスは良い。

文化村の近くに新しくできたホテル

ここ泊まって、土楼巡りをすれば便利だが、10年以上にわたって バックパッカーを中心とした日本人観光客が、バイクタクシーを利用した土楼巡りを続けてきた結果、相場がつり上っていることは容易に想像できる。そのため、前回の土楼巡りのテーマもぼられ方の研究であった。 文化村が横にあり、バスの発着点になっているし、便利さを取って、ここを起点にするか、コストパフォーマンスの良い別の場所を探すか、意見の分かれるところであろう。

私の場合は、すでにここに2回泊まったし、数キロ離れた湖坑の町に、新たな宿ができているのをバスから見かけたので、次回来る機会があれば、湖坑の町中の宿を試してみたい。それと初渓の土楼宿に泊るのとのセットだ。しかし、客家土楼は、二回行けば 流石に十分という話もあり、観光目的なら、別の名所旧跡に行った方がよいのかもしれない。そうは言っても快適土楼宿に泊まるというのは、スペインなどの古城ホテルに泊まるイメージもあり、試して見たいとも思う。これに対して、そのまんま土楼宿は 便所も一苦労で、厳しさが先行し、普通の観光客には お勧めできない。


参考) 前回の記事

第74回 特集 福建省 客家土楼巡りのバスは走らず 第一部 バイク・タクシーのぼったくられ方 2008年6月
第75回 特集 福建省 客家土楼巡りのバスは走らず 第ニ部 名無しさん土楼を訪ねて 2008年6月




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