Rosa Linda Memorial Fund

2002年1月作成
2008年1月最終更新


(→2006年11月更新分へ)

以前、薬代が高く払えなくて病院に行けず、肺炎で亡くなった 生後5ヶ月の少女Rosa Lindaのことを紹介した。このような事例は、どう見ても行政が対応すべき事柄のように思えるが、何処からもお金が出て来なくて、病院に行けず、同じように亡くなる子供も少なくない。
公立の病院へ行けば、貧乏だと言えば、お金は払わず最低限の面倒を見てくれるが、薬については、保険などもなく、病院で処方されたものを近くの薬局に行って買う仕組みになっている。薬にもよるが、現地の感覚とかけ離れ、べらぼうに高い場合が多い。

そこで、緊急の場合に貸し出す基金を設け、一つの村くらいを対象として、そこの子供に、薬代を貸し出す仕組みを考案した。協賛者が現れ、各地に姉妹基金ができれば、基金の融通などもでき、強固なものになると確信していた。

ところが、1年以上経っても、未だ実施の目処が立たないのである。
その理由は、私がいつも主張しているところの「貧困問題=怠け者問題@フィリピン」に帰着される。飲んだくれやギャンブル狂いを排除して、この基金から借り出すにふさわしい人物をどのように見つけ出すか?これが難しい。
また、お金を貸し出すのではなく、そのまま与えてしまうとしたら、フィリピン中から、大金持ちも含めて、どっとお金をもらいに来ることだろう。貸し出すので無ければ、資金が続かないのは自明である。しかし、貸し出しても、順当に返してもらえるあては一向に見つからない。

ある日、熱射病のようになり、熱が出たので、次の日に大きな日傘をさして歩いていたら、道で会う人に順番に、「あなたの傘を貸してくれ」「傘を私にくれ」と言われ、いちいち対応していたら傘が何百本あっても足りない。挙句の果てに、「私に傘を貸さないとは、あんたはなんて利己主義なんだ」と言い出す始末。人の欲しがるような物を持ち歩くのはブルジョア的だと言えなくもないが、こういったことが日常的に起こる中で、「あなたが借りたお金を返さないと、他の病気の子供が、お金を借りれなくて死んでしまうかもしれない。」 そのようなことを、いくら言っても、「お金が無いものは仕方が無い。」と言って、しばらくしたら昼寝でも始めるのがおちである。

実際に試してみて、このようになったわけではないが、人に話てみたら簡単に同意されてしまうのである。

この基金の案内を最後にリンクしておく。
Is this true or joke?
PUBLIC NOTICE : Rosa Linda Memorial Fund.


 以下、2006年5月更新

ずっと更新していなかったが、このプロジェクトに出資して下さる方が現れ、それを追い風に、2年前に看板を上げる運びとなった。大人を病院に連れて行き薬代を払う羽目になったようなことはあったが、大々的にこのプロジェクトを宣伝しているわけではないこともあり、このプロジェクトで対象にしている 子供の命にかかわるような事例は これまで現れなかった。ところが、つい最近になって、医療費を貸し出す事例が二件出てきた。

近所のアンヘラに盲腸の疑い

近所に住むハイスクールの生徒アンヘラは急にお腹が痛くなり、家族がシキホールの公立病院に連れて行ったところ、医者は盲腸と診断し 手術することになった。母子家庭だが、母親は中東で家政婦をしていて、それなりに資金があるので、医療設備が整ったドゥマゲッティの病院で手術することになった。しかし、送金されてくるまでに、しばらく時間がかかるので、つなぎで資金を貸し出すことになった。お金を貸さないと盲腸が手遅れになる可能性があるのかどうかは、完全には判断がつかないが、その可能性を否定しきることもできないので、このプロジェクトから医療費を貸し出すことにした。

ドゥマゲッティの病院で、手術の前に再度検査したところ、結局盲腸ではないということになった。薬で盲腸が散ってしまったのか、それとも、最初から盲腸ではなかったのか よくわからないが、とにかく 手術の必要は無くなった。精密検査の結果、体内に細菌が沢山入り込んでいたので、抗生物質を投与することになった。ずっと高熱が出ていて、私は ほんとうに盲腸かという疑いも持っていたが、とにかく、抗生物質が効いたようで、次の週には熱も痛みも収まり、アンヘラは無事 退院することできた。

ドゥマゲッティで、アンヘラが入院したシリマン大学の病院は、お金持ちが利用する病院で、母親からの最初の送金では不足し、退院のため追い貸しすることになった。返済は、次の月の定期の送金で行うということになったが、ふたを開けると、またまた資金不足で、一部の返済は、さらに次の月に持ち越すことになった。貸したものは返らないのが フィリピンの常識だと、私の方で繰り返し主張しているので、結果が楽しみである。
ただし、「返済が滞るようならこのプロジェクトは直ちに中止だ。」と、半ば脅迫するかのように繰り返し、私は言っていて、さらに、借り手が将来、万一の場合にまた借りようと狙っているという事実があり、これらのことから、例外的に、お金は返ってきそうな気配である。
もしも さらに返済が遅れるようなら、ペナルティとして、利息を取って、それでノート等を買って、貧しい子供たちに配る予定だ。 「誰々のプロジェクトへの返済が遅れ、そのペナルティとして払わせた利息で買ったノートだ。」と、ノートをもらった親に説明して回るつもりだ。

今回の件は、それなりにお金を持っているアンヘラの母親が、緊急事態に備えて、現地にそこそこの資金を預金しておき、そこから引き出すのが正解だと言えそうだが、予備の資金などは一番使い込まれ易くて危ないお金だとも言えそうだ。

非常に貧しい家庭の子供だけを支援したいが、さりとて、今回の件は全く意味が無かったとも言い切れない。

4歳児がデング熱にかかる

アンヘラの病気が治ってしばらくしたら、今度は別の子供がデング熱にかかった。近所の日本人がデング熱にかかった時には、10万ペソ以上医療費がかかったそうだ。私も2年前にデング熱にかかったと思っている。発疹ができて、三日間熱が出たからだ。その時、近所の学生が私の家の前でピクニックをして、なぜか 私がスパゲッティをつくることになった。39度近くの熱でふらふらになりならが料理をしたが、そのうち、熱も収まり斑点も消えて、医療費は無料で済んだ。そういう話を、デング熱の子供の親に対して、半ば豪語するように言ってやったが、その親は、単にいじめのようにしか取らなかったかもしれない。
インターネットで調べたところ、デング熱の特効薬はなくて、治療の基本は安静にすることだそうだ。鎮痛解熱剤の投与や、場合によっては輸血するそうだ。もう一つ、デング出血熱という病気がある。デング熱が悪化してそうなるのか、別の原因なのかよく分かっていないそうだ。とにかく、こちらは死亡率が高く、医療費もかさむはずだ。

デング熱にRosa Linda Memorial Fundが有効かどうか、専門家の見解を踏まえて、検証が必要だ。症状により医療費が大きくバラツキそうである。症状と医療費と治療効果を表にまとめたものが欲しい。現状だと、一人に貸し出せる金額はせいぜい1万から2万ペソである。そして、一人に2万ペソも貸してしまえば、返済はかなり難しそうだ。

場合にはよるが、基本的にアンヘラの場合と同様、返済が滞れば罰として利息を取るし、それでも効果がないなら、一旦プロジェクトを中断する。そして、次に借りに来た人に、「だれだれが滞納しているのでプロジェクトは中断している。」と説明する。さらに、滞納者の家に行ってもらい、「あんたが、滞納しているからお金が借りられないため、うちの子供は命を落とすかもしれない。」 そう言ってもらい、返済の交渉をしてもらう。

かなり厳しい内容だが、それぐらい考えておかないと、このプロジェクトは回って行きそうな気がしない。

それでも、どうしても返済が難しい場合は、こちらから仕事を提供して、それで働いて、返済してもらうようなことになろう。


不足している医療費を貸し出し、そのお陰で子供の命が助かり、後から貸した資金はちゃんと戻って来て、めでたし、めでたし。 どこかのNGOのホームページで見かけそうな内容だが、そんな奇麗事だけで終わるとは到底思えない。

他でも散々書いているように、現地で不足している物資を 持っている人から提供してもらい、それが必要な貧しい人々に配ったとしても、依存癖を強くさせ、乞食を育成しているだけに過ぎなくなる可能性が出てくる。そう言う私も、人の喜んでもらうのが嬉しいので、重さで言えば、合計1トン以上を、これまでに、フィリピンで 人に あげてしまった。乞食を育成しているだけにならないよう、当然 人はよく選んでいるつもりだが、この件に関して、今 100点満点の答えを持ち合わせているわけではない。

医療費の貸付と物資をを配るのとは、外国人の目からは簡単に成果の出そうな取り組みに見えるが、実はそうではないという点が共通している。それは、単なる私の思い過ごしで、簡単にめでたし、めでたしの結果が出れば、素晴らしいが、多分そうはならないはずだ。

このプロジェクトの目的は、子供の命を助けることだが、それを続けて行えるようにするために、回収のノウハウを蓄積していきたい。


プロジェクトのメリット

このプロジェクトのお陰で、子供の命が助かれば それだけでも素晴らしいが、他でも同じような基金を立ち上げてもらい、広がっていけば、もっと素晴らしいので、その他のメリットを挙げておく。

このような基金を立ち上げていようといまいと、外国人なら、知り合いから 医療費のためにお金を貸してくれと言われる可能性が高い。特にフィリピン人と結婚した人であれば、親戚から頼りにされる可能性が高い。その場合に、この手の基金を立ち上げておけば、基金の総額を、自分の経済力に応じた貸し出し合計の上限と決めることができるはずだ。実際には、いろいろな状況が生じて、思惑どおりに進まないかもしれないが、一定の縛りにはなるはずだ。
また、返済が滞っている人がいる状態で、新たに貸し出しを希望する人が現れた場合には、新たな希望者を、返済が滞っている人の所へ行かせて、返済を要求させ、それを次の貸し出しに回すことにすれば、これもいろいろな縛りになるはずだ。
少し姑息なことを書いているかもしれないが、メリットを見て、同様の基金を立ち上げる人が現れることを期待する。

姉妹ファンド

同様の基金を立ち上げ、名乗りを挙げて頂き、姉妹ファンドとして、必要なら資金も融通できるようにしたいものだ。


2006年8月更新分

貸し出していた2件については、予定より遅れはしたが、いずれも完済された。フィリピンにしては、良好な結果と言える。
しかしながら、課題も見えてきた。貸付すべきかどうか、その判断が非常に難しい。お金は何にでも使えるため、子供の薬代が払えないと言っても、何か元の原因があって、それが、借金の返済なのか、ギャンブルで大負けしたからなのか、とても貧しいからなのか等いろいろある。場合によって貸し付けるべきかどうか、プライオリティが変わってくるはずである。ところが、借金の理由を、どれだけ正直に説明してくれるのか これが甚だ疑問だ。
外国に出稼ぎに行っている家族や親戚に 追加で仕送りを求めるため、身内の不幸や、交通事故、家の建て替えなど、勝手に理由をでっち上げる話は枚挙にいとまがない。
でっち上げも含め、子供をだしにして、単にお金を借りようとしている場合もあり得て、適正に審査する必要があるが、通常は緊急で、審査に時間をかけるのは難しい。
試行錯誤で進めるしかない。


(2006年11月更新分)

プロジェクトに関心を持たれることは悪くはないが、今度は、双子が生まれ、保育器の使用料などで、費用がかかるのでお金を借りたいという家族が現れた。しかし、その理由では、このプロジェクトの対象にはならないと、拒否すると、子供に黄疸が出ていて、先生が薬を買うよう指示していて、その費用で500ペソ足りないと言い出した。なんとなく大丈夫そうだが、とにかく返済は大変なので、後で家族の一人に私の家で働いてもらうということで、その賃金を前払いする形で500ペソ払った。

黄疸について、あとで確認したところ、新生児の黄疸は、ほとんどが生理的なものであり、生後3日目頃出現し、7日目頃には自然に消えるので、大抵の場合、特別な治療は必要ないとのことであった。新生児の家族から、その後何も言ってきていないので、大丈夫であったようだ。


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