近所の分まで電気を引く

2003年4月作成   
2018年9月最終更新


 /* 2018年9月 インフレ後の費用の概算値を載せた。 */



電柱と電線

工事をした原っぱ


日本のテレビでは、日本で少しだけ節約したお金で、途上国の電気の無い地域にロウソクを何本か送ることができると宣伝している。しかし、実際に電気が来る方法を検討した方が さらに良いだろう。

そこで、「電柱から離れているため、通常なら電気を引くのが難しい田舎に住み、少し太めの電線を買って、近所の分まで電気を引く。」 ということを考えた。

日本では電気を引くのは電力会社の仕事である。どうして自分で電線や電柱を買わないといけないのか。そう疑問に思う。しかし、日本でも、例えば 山の中で電柱から離れたところに家を建て、そこに電気を引こうとすれば 実費を負担しないといけない。これと同じことである。

ただフィリピンの田舎では、日本の山の中で、ポツンと離れて住むような状況の家がやたらと多い。そんなところに住むのは不経済で、便利なところに集まって人が住めばよい。この方が正論と思うが、その話を続けると、電気を引く話題に なかなかたどり着かないので、別の機会に検討したい。

とにかく、実際に、電線や電柱を買う予算がなくて、電気を引けない人々がフィリピンの田舎には沢山いる。そういう人たちの近所を選んで家を建て、自分の家だけでなく、ついでに近所の分まで電気を引いてやろうと考える外国人が沢山現れれば、フィリピンの田舎の電力事情は良くなることだろう。

このプロジェクトも、「してあげる型」の一つで、とても100点満点を付けるわけにはいかないが、実施する側にもいろいろメリットがあるので、お奨めしたい。

海岸沿いに家を持つ近道

以下の論理はなんら必然性はないが、一つの選択肢としてとらえれば 有効な考え方であり、是非 参考にして頂きたい。

涼しくて眺めが良い海沿いの家

我々 外国人がフィリピンの田舎に家を建てる場合、ビーチロットと呼ばれる海岸沿いに家を建てることが多い。海からの涼しい風が吹く海岸沿いと、町中でアスファルトが溶けているような道沿いとでは、体感で10度以上気温が違うように感じることもある。涼しくて、しかも眺めの良い海岸沿いは魅力だ。

割安なビーチロットは電気を引く費用が高くつくことが多い

ところが、そのような海沿いは、町中からは離れ、電柱からも かなり距離があることが多いのである。もちろん 便利な海沿いもあるが、そういうところは、往々にして、地価が高騰している。それでは物価の安いフィリピンのメリットが薄れ、フィリピンはやめて、ハワイにでも家を建てた方が良いかもしれない。 値段が手頃で、海の近くの土地だと、電柱からかなり距離が離れている、可能性が高いのである。
価格が手頃で、静かで、眺めも良い。この3つを兼ね備えたところというと、大抵は少し不便な場所になってしまう。
それでも トータルで判断すると、我々外国人にとっては、電柱や電線に少なからぬお金を払っても、少し辺ぴな海沿いの土地に家を建てるメリットのあることが多いのである。

ついでに近所の分も

ここが一番論理に飛躍があるところであるが、「ついでに近所の分も」と考えても、それほど悪くはあるまい。 もちろん、費用がかかり過ぎるようでは、それも難しい。必要な電線の長さやその地域の状況によって費用は異なってくるし、どれだけ払えるかという予算も人によって大きく異なる。少し打算的な考え方かもしれないが、費用対効果も踏まえ、費用が現実的な額である必要がある。

それでも、少々費用がかかっても、このようなついでには、いろいろトクなことも多い。

土地を見つけ易く、ぼられ難い

近所の分まで電気を引くという条件で土地を探せば、進んでとは言わないまでも、土地を売る気になる地主は増えることだろう。 そして、地主は法外な金額を請求するのが難しくなる。買う側は「あんたが 高い値段を要求するなら、近所の分まで電気を引くのはやめる。」と主張することもできるし、近所のメリットになることなので近所人々が味方になってくれる。
何か周囲の人の役に立つことをしたい。一方、フィリピンでボッタリに会いたくない。この二つのことを同時に満足できる可能性が高いのである。

電柱を建てる土地の地主との交渉にも有利

「これも、電力会社の仕事では?」 そういう疑問は残る。しかし、とにかく、電線を引き、電柱を立てる土地の地主から許可をもらいに行くことになるのが普通だ。その場合に、近所の分までまとめて電気を引くのなら、地主側も、これを拒否するのは難しい。近所の人に、地主の説得にあたってもらうこともできる。

近所との関係が良くなる

このような近所にメリットのあるプロジェクトを行えば、近所関係が良くなるのは説明はいらないだろう。

ある土地に長く住みたいのなら、近所との関係を良くするのは とても大切なことだ。

フィリピンに外国人が住む場合、頑丈な塀を建て、中に豪邸を建て、贅沢に暮らしている。その結果、周りの人からは嫉妬され、嫌われて、結局 近所とは付き合わない。そういうことが往々にして起こる。人それぞれで、そういうやり方も一つではあるが、少なくても、ここではそういうことは、お奨めしない。
国際交流と言えるよう、近所ともいろいろ交流して、日本人や外国人が近くに住んでくれて良かったと思われるように なりたいものである。


現状では、電柱を立て、電線を張り終わり、一部の家庭が電気を引き始めているところである。合計6、7軒が電気を引く予定である。

近所の分まで電気を引くと言っても、実際には、電柱を立て、太い電線を張っただけであり、支線の部分は、各家庭で費用を分担してもらった。どの家からもそれほど遠くならないよう 少し蛇行するなどの配慮を行った。

また、ここではシキホール島での事例を紹介しているが、他の地域でも ほとんど同じようなことを行えるはずだ。

費用は、電線、電柱、人件費が主で、合計 約7.0万ペソ (2003年4月当時)

 2018年9月時点での概算 約24万ペソ

当初希望予算の倍以上かかってしまった。それでもやる意味があったかどうかについては、今後、起こる状況を見て判断したい。

その他、詳細は以下に別途まとめる。

→ 費用・作業の詳細


以下、2003年5月追加分

4月の半ばに、私の家にも電気が来た。そこで、これまで別の場所にある下宿屋に置いてあったパソコンを何台かもって来て、子供たちにパソコンの使い方を教えるプロジェクトを始めた。以前から 単発的には何度も行っていたのだが、拠点ができたお陰で、毎日10人程度の子供が来るようになった。お陰で、パソコンは不足し、日本に戻った時に買い足すことにした。

パソコンの台数を増やすと、電気代が高くつくので、当面はノートパソコンを中心に数を増やすことにした。ノートパソコンだとデスクトップパソコンに比べ、電気代は五分の一から十分の一程度で済むからである。
シキホール島は以前も紹介したように、フィリピンで一番と思われるほど電気代が高いのが難点である。
1KWH当たりが4.91ペソ。それにPPA(赤字経費の埋め合わせ)を加えると1KWHあたり10ペソ近くになってしまう。そうは言っても、日本並かそれ以下なので、払えないこともないのだが、将来に渡って、払い続けるのは大変なので、少々遅くてもノートパソコンが良い。

世界最小??の電気代

パソコンを教えるプロジェクトは別途詳しく説明することにして、私の家以外では、三軒が既に電気を引いていた。そのうちに一軒は お隣で 私の家がある土地の元地主。

母子家庭で、ほとんど現金収入がなくて困っている。そこで、電気代も節約に節約を重ね、なんと一ヶ月で0.6KWHであった。これなら おもちゃのようなソーラーパネルでも十分だろう。14KWHまでは、基本料金で定額なので、かなりもったいない。それでもPPAの方は1KWHの消費電力から順次増えていくので、節電しているのである。

3Wの蛍光灯

これだけ、電力消費を抑えられているわけは、3Wの省電力型のランプを 深夜のセキュリティ用の灯に使っているからである。日本でも売っているが、裸電球のソケットに取り付けられて、蛍光灯と同じか類似の動作をする灯である。途中で折り返えす細い管の中が光る。3Wなら、一晩付けっぱなしても ほどんど電気を消費しない。売り文句によれば、8割 電気を節約できるそうで、3Wでも、十分使い物になる。

少し前に日本で類似のものを見た時には1000円ほどしていた。フィリピンでは安くて、150ペソから30ペソ程度である。150ペソというのは、大手メーカーの準正品。一方30ペソというのはマニラの道端で売っている価格。正確には3本で100ペソ。2Wか3Wから18W程度まであるが、値段はどれも同じである。(因みに、フィリピンで買って、日本に持ち帰って使いたいところだが、電圧が違うのでどうしようもない。省エネ、地球温暖化対策には、持って来いなので、100V品が、100円ショップで売られるようになったら素晴らしい。裸電球メーカーが、既得権益を守るため 行く手に立ちはだかりそうだが、これが普及について、環境省にメールで提案したいものだ。)

30ペソ品をマニラで買ってきて、隣に寄付したのだが、現状は問題なく使えている。寿命なども含めて、安物は本当に問題がないのか、詳細は現在評価中である。

これまでに、安物の方で起こった不具合は、

(1)家に持ち帰って試してみたら点かないことがあった。
フィリピンで、電気製品を買うと、かならず店で正常動作を確認してから売る。
すべて、点くことを試して買っているのだが、家について試してみると、点かないものがあった。着荷不良である。飛行機の預け荷物として、マニラから持ち帰ったので、移動中に壊れた可能性も否定できない。

(2)中古を売りつけられた。
蛍光灯が古くなってくると見られる付け根部分の輪になった汚れ。あの汚れが見られるものを売りつけられたことがある。  粗悪品が横行するフィリピン。汚れのあるものは、ババ抜きのババに相当する。道端の電球売りは、そのババを 既に、他から つかまされているわけで、ババはいらないという人が現れると直接彼らの儲けに影響する。そう簡単には 済まない。

以上の二通りだが、準正品とそうでないものでは、大きな値段の差があるので、少々不具合が起こっても、安物の方が良さそうだ。

残りのニ軒

私の家を含め四軒には電気が来たのだが、近所のうち残り二軒はまだ接続されていない。

一軒は、私の家の裏側にある大工。私が家を建てるのに、最初からずっと雇っている大工の一人である。電柱を建てる時、彼はいろいろ理由をつけ、その結果、電柱が彼の家の直ぐ近くに立ち、遠回りになって、電線はかなり長くなった。 そして、ふたを開けると、他の家は電気を引いたのに、彼の家はまだ つながっていない。 金がないと主張するのである。

彼を、大工として雇った理由は、彼が電気を引く費用のためであり、既に、必要な費用の三倍以上を支払っている。しかし、食費に消えていったのか、何かを買ったのか、よく分からないが、使ってしまったようである。

かなり しつこく催促したところ、一ヶ月以内に電気を引くと言っている。

いかにもフィリピンらしい話だ。

もう一軒は、おばあさんの住む家。最近、娘がセブから戻ってきて一緒に住みだしたので、うわさでは、そこそこ予算があるはずであった。ところが、高くて電線や電柱が買えないと言い出したのである。おばあさんは、毎日水くみで大変だ。水の入ったポリタンクを台車に載せて、1kmほど離れたところから歩いてくる。 とても気の毒だ。 電気だけでなく、近所に、水道が来るようにしたいのは、やまやまだが、まだ実現していない。
いずれにせよ、このおばあさんの様子からも、電気を引く予算はなさそうだ。

そこで、この家の子供でハイ・スクールに通う二人を、大工の手伝いとして、家を建てるのに雇った。そして、支払った賃金はすべて電気を引く費用に回すよう約束させた。ちょうど、学校が休みの時期。子供たちも使う電気。それを引くための費用を、子供たちも働いて作るのは、良い案だと思って始めた。

ところが、ここはフィリピン。だたでは済まない。必ず何かが起こる。

今度は、子供たちがデタラメをやり出した。非効率で、しかも、とても危険なのだ。壁にペンキを塗るので、高いところは竿の先にローラーを付けて塗れと指示しても、やたらと木に登りたがる。落ちはしないかと、心配でならない。時間も何十倍もかかる。 すべてはこの調子なのだが、電気を引くために雇っているので、首にできないということ意外は、ここでの話題とは関係ないので、この話は別の機会に続けることにする。

(参考) 遠い場合はEmergency Lightで


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