バンブー・ハウス(Bamboo house) 

2018年10月作成


ドゥマゲッティのロビンソン・デパートの前で展示されていたバンブーハウス

ネイティブで、お手頃予算でできそうな家を、これまでに いろいろと取り上げてきた。フィリピンの昔ながらの原住民的な家はニッパ・ハットと呼ばれ、屋根が茅葺(ニッパ)なのが特徴で、今回取り上げるバンブー・ハウスも、概ねその中に含まれる。屋根まで竹で作られている家もあり、それだとニッパハットとは言わないのだろうが、フィリピンでは あまり見かけない。(因みに、半分に割った竹を屋根に上向き・下向き交互に並べているような屋根がこれに当たる。)

まず取り上げる例は上の写真のコテージで、見た目にインパクトがありそうなので 最初に取り上げた。ただ、これを今回紹介するメインと考えているわけではなくて、これでは、住むには ちょっと小さ過ぎる場合がほとんどだろう。それでも、フィリピンに来て、趣味のDIYでこの手のものを作ってみたい人には、参考になりそうだ。

お薦め事例

さて、今回取り上げる中で 一押しのバンブー・ハウスは、次の写真の建物だ。シキホール島にあり、実際に家に行ってオーナーと話たが、自分でも住みたくなるような雰囲気が良い家だ。ただ、急に押しかけて見せてもらっただけなので、いろいろな部分を詳しく写真に収めるようなことは出来ていない。ここでは、手元にある 1枚の写真を載せるに留めるが、家の中、バルコニー、壁の作りなども含め、かなり いい感じの家である。

参考例としてお勧めのバンブーハウス@シキホール島


宿の事例

次の例は、先日ネグロス島で泊まった宿(Tongo Sailor Inn)のコテージで、こちらは、類似のものを建てるのがとてもお薦めというわけではない。しかし、私自身で お金を払って泊まっているので、細かいところまで写真も撮り放題だったので、その中から、建て方の詳細な部分の参考のため、いろいろな写真を紹介しておく。

ちょっと否定的な書き方をしている理由は、実際には写真よりも かなり朽ち果てている感じがするという点が大きい。しかし、それはメンテナンスの問題で、個人で住むなら、そこは きっちり対応できそうでもある。また、主観によるとも言え、適度に時間が経ち、良い味わいが出ていると感じる人もいるだろう。この宿のオーナーの話では、翻訳の仕事をしながら、何年もコテージの一つに滞在していた人が居たそうだ。町中のホテルに泊り続けるより環境は良く、環境は立地の話ではあるが、このようなコテージは 愛好家には居心地が良さそうだ。

Tongo sailor Innのコテージ@ネグロス島のタンボボ湾付近

以下、実際に類似のバンブーハウスを建てる場合に参考になりそうな写真を紹介しておく。

バルコニーの壁の竹
ちょっと長めの竹を、写真のように 交差して2段重ねに打ち付け、終わったら、上・下まとめて端を切り揃え、最後に、切った部分の上に、上下に2本、竹を打ち付けておけば完成する。以前雇った大工が、これより複雑な竹細工で、類似の仕事をしたら1週間かったが、これだと、その1割程度の時間で済みそうだ。

柱の上部と竹の取り付け部分

主要な柱まで竹にするのは強度不足で、ココナツ材が使われている。上の写真は、柱と補強用の竹の接合部分で、ひもで結んであるが、さらに補強用に竹のくぎが使われている。

屋根裏部分は、竹のベッドのような構造

大小の竹を重ねて作ったちょうつがい

壁は、アマカンと呼ばれる竹を編んだものを使う場合が多いが、ここでは、ニッパーか、その類似の材料を、沢山並べて、壁にしている。

ブロック塀で囲っただけのオープントイレ・シャワー
タイでよく見かけるスタイルで、開放感があって気持ち良い。熱帯以外の人は冬があり、思いつきにくい
やり方だろう。

基礎の様子
この手の建物は高床式が基本だが、さらに柱は、地面からできるだけ高い位置までセメントにして、その上に木や竹を置き、白アリにやられないようにしたい。個人的なお薦めとしては、床の下の梁で外側の四角形の部分までは、地面からの柱の部分と共にセメントで作っておけば、白アリ対策になり、かなり長持ちしそうで良さそうだ。因みに、この写真では、地面に、かなりの数のアリ地獄が住んでいて、建物を白アリから守ってくれているので素晴らしい。


その他の例

こちらも、別途紹介したが、以前に近所のシニア・ハイスクールの生徒に行った竹工作教室の実習風景で、写真に写っているような建物を製作してもらった。さらに別途紹介しているが、これは、モバイル教室に使うもので、5つのサブ・アッシーに分解して、軽トラに積んで遠くに運べるようになっている。

いきなり複雑なものを作る前のステップとして、自作を目指すなら自分の練習用、もしくは、大工を雇うなら、大工の腕の評価用に良さそうな建物と言えそうだ。できたものは、重宝されて無駄になることはないだろう。

竹工作教室の様子

上の建物と類似だが、一応壁や床もあり、寝泊まりも可能な造りで、タイで見かけたものだ。写真のようなビニールシートは、車にシートを被せるように、しばらく使わない場合の雨よけには便利だが、見栄えは良くないので、使っている時には、竹の簾の方が良さそうだ。

小型だが壁、床もあるバンブーハウス

残念ながら参考事例の写真が足りていない。まずは上に挙げた一番お薦めのバンブーハウスの壁やバルコニー、竹の組み立て部分の詳細等、いろいろと写真を紹介できれば、バンブー・ハウスを建てるのに興味がある人には参考になるはずだ。

一押しのバンブーハウスはシキホール島にあり、外国人の見学者も多いとのことで、要望があれば、見学ツアーをやったら良さそうだ。お昼時に、食材と飲み物を持参して、オーナーと一緒にバーベキューでもやったら良いだろう。

その他、Bamboo cottageなどの名前の宿もあり、実際に、その一つに泊まりに行くつもりだったが、台風が来たのでキャンセルしてしまった。

また 機会があれば、さらに調査をして、写真を追加したい。


関連情報

以下、バンブーハウスを建てる上での参考情報を紹介する。

フィリピンの竹の特徴・日本との違い

・フィリピンでは、日本より太い竹が多く、直径15cmを超えるものもよく見かけ、太さ相応に日本肉厚である。
・日本の竹は、それぞれ独立に垂直に立っているものをよく見かけるが、フィリピンの竹は根元が一か所に集中していて、そこから放射状に広がっている場合が多い。(写真左下)
・フィリピンの竹の根元の方には トゲがあり、切り出すのに手間がかかる。(写真右下)
・日本には四季があり、春先にタケノコが出てきて、それから成長していくが、フィリピンは熱帯で、年中竹が育つ。例えば、日本で、竹を食う害虫の対策として、「竹を切り出す適切な時期を選べば十分」と、検索結果では大抵そう書かれている。日本では竹の水揚げが止まる秋から冬に切れば、竹の材質が締まり、虫がつきにくいそうだが、フィリピンでは秋も冬もなく、水揚げも止まりそうにない。日本とは別の対策が必要になるはずだ。

フィリピンの竹は日本のように、まっすぐ上に伸びるというより、一か所から放射状に沢山の竹が広がる感じだ。

根元はトゲトゲで、切り出すのに手間がかかる。

予算について

材料費

私の場合は、友達の竹藪から、500ペソの切り放題で竹を買っている。一方、外人が高く竹を売りつけられた話も耳にする。反対に、私が雇っている大工は、仕事がないと、近所の竹藪から勝手に竹を切り出し、ベッドや長椅子などを竹で作って近所の人に売っている。これだと材料は無料である。竹藪の所有者になるとか、竹の調達コストについては、いろいろと工夫の余地があろう。

人件費

趣味で自作したいのであれば、人件費もかからず、限りなく安いコストでバンブーハウスを作れる可能性がある。一方、これが普通だろうが、大工を雇う場合には、大工のスキル、勤勉さ等により、かなりバラツキが出そうだ。それでも、例えば、日当300ペソ、5人で10日と見積もって、人を雇って作ってもらえば、何がしかのものはできるだろう。ただし、丸投げだと厳しそうで、フィリピンの一般の人がするように、自分でお金と工数についてかなり管理しないと、最適な場合に比べて、費用はかなり膨らむことだろう。

メンテナンス

竹や木の家の場合、通常は かなり頻繁にメンテナンスが必要になってくる。建てた後は何もメンテナンスしないという考えだと、かなり厳しそうだ。
メンテナンスとしては、雨漏れの修理や、白アリのように竹を食べるボクボクと呼ばれる虫の被害の対策もある。また、床も竹で作った場合には、通常は竹のスティックを釘で打ち付けるだけなので、人が床を歩くと そのうち釘が浮いて来たり 竹が折れたりして、結構な頻度でメンテナンスが必要になる。竹の床を綺麗に見せるため、定期的にワックスをかける人もいる。

横殴りの雨は、日本では台風の時くらいしかないが、フィリピンでは、普通の雨でも横殴りの場合が多い。壁の竹に雨水がかかると、竹が変色し、朽ち果てたように見えだす。それが、味わい深いように見えるか、それとも、単に老朽化したように見えるか、場合によるだろうが、特に雨に打たれることによって、竹のメンテナンスが必要になることは多い。

他にもいろいろなメンテナンスが必要になるかもしれないが、以下、いずれの場合でも、メンテナンスの参考になりそうな話を挙げておく。

小さく始めて、徐々に拡張する

いきなり バンブーハウスを沢山建てて宿を始めるとか、いきなり本番で、大きな建物を建てた場合、特にバンブーハウスでは、大工、オーナーに十分な経験がないと、想定外のトラブルが後から発生し、メンテナンスもできず、建物を放棄してしまう場合が少なくない。
そこで、宿の場合なら、最初は少しだけコテージを建てて、しばらく様子見しながら、徐々に数を増やす。
また、個人の家の場合なら、最初から拡張性を考えた設計にしておき、まずは、その一部の必要最小限の部分だけを作って、問題が出ればフィードバックしながら、拡張していく。

大工の確保

建築当初は、大工を集めてから建て始めるが、メンテナンスの方は、オーナーの都合によらず、対応が必要になってくる。日本でも台風で家の一部が壊れても、大工さんがすぐに来てくれるとは限らないというとの似ている。フィリピンで宿をしているなら、そんなに規模が小さくなければ、大工を雇い続けることも可能かもしれない。 いつでも、どこでも通用する良い案はないが、メンテナンスの仕事をしてくれる大工と良好な関係を、日頃から保っておくのが有効だろう。

趣味のDIY

自分でメンテナンスする人なら、大工が雇えなくても問題ない。面倒なことはしたくないという人が多そうだが、趣味で大工仕事をやりたい人やマメに動く人は、バンブーハウスの住人に向いていると言える。

ニッパ・ハット vs. バンブー・ハウス

ニッパハットとバンブーハウスの違いが かなりあいまいなので、少し補足説明しておく。

ここでは、言葉の通り、竹を多用している家をバンブーハウスとよんでいて、それが一般的と言えるが、かなり大きな木造の家で 茅葺ではあるが、竹はあまり使っていなくてもバンブーハウスと呼んでいる人もいる。

ニッパハットは、屋根が茅葺のニッパであれば、そう呼びそうだが、hutは普通は小屋と訳しそうで、それだと、小さい建物限定と言える。しかし、それでは、ピザハットは小さいのかという話も出てくる。私のイメージだと、茅葺は必須で、壁には、竹を編んだアマカンという材料を使っている場合が多いが、そのような建物を一般的にも、ニッパハットと呼んでいる場合が多い。参考のため、これまでに取り挙げたニッパハットの写真を、以下に二軒再掲しておく。

2万ペソ(@2007年)のコテージ

山の上の絶景に建つコテージ@シキホール島
建築中の写真


面倒な話が多くなってしまったが、実際にも、面倒なことはしたくない人には、バンブー・ハウスのオーナーになって住むのは向かない場合が多く、最初から退散してもらった方が良さそうだ。一方、自然の多い場所に、ネイティブな家を建てて住みたいという人は、私の知っている人の中でも多いし、興味のある人、しかも向いてそうな人も多そうだ。そういう人は、バンブーハウスに快適に暮らせ、しかも、費用も非常に安く抑えられそうだ。



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